Amazon映画『ビューティフル・ボーイ』救えない、でも帰る「家」は必要。
こんにちは!lenoreです。
今回はAmazonオリジナル映画『ビューティフル・ボーイ』について書こうと思います。
鑑賞後にこの映画の内容が実話だと知り、絶句しました。
それくらい壮絶な、薬物依存との戦いが描かれています。
徐々に失っていくもの
【この段落以後、内容について言及があります】
薬の存在がすごく「近い」
ニック・シェフ(ティモシー・シャラメ)は、
●志望した6つの大学に全て合格するほど成績優秀
●読書家
●物書きの才能がある
●絵も描いている
●サーフィンで波乗り出来るほど運動神経抜群…
様々な方面の才能に恵まれた青年でした。
そんな彼が陥ってしまったのが薬物依存。
最初は勉強の合間の気晴らし程度のものだったのに、
クリスタル・メスという特に依存性の高い薬に手を出してしまい、さらに悪化してしまいます。
日本人の感覚からするとそもそも、
気晴らしや息抜き程度の感覚で薬をやってしまう & それを手に入れられる環境にある
この辺りにも驚いてしまうんですが…💦
父親のデヴィッド・ニック(スティーヴ・カレル)も、
「若い頃はそりゃやった時期はあったが…」みたいなことを言っているシーンがあったので、
私の感覚よりは薬の存在が近い=薬の依存症という問題も身近にあるということなんだろうなと感じました。
“Who are you, Nick?"
ニックが薬に依存していく様子を見ていて、
ぐったりしたり急にハイになったり逆に落ちたり…といったような体や気性の変化だけではなく、
家族や支援者など周りの人の信頼を徐々に失っていく様子が、見ていて本当に辛かったです。
なんていうんですかね…薬への依存が強いせいというのは頭で分かってはいても、
●薬を買うために、年の離れた弟が貯めていた貯金を勝手に盗む→尋ねただけで逆ギレ
●久しぶりに会ってハグしあった直後に「◯日間シラフなんだ、◯◯へ行く金を貸してくれ」→いや絶対それ薬買いますやん笑!
●どこに行ったか分からなくなった後に居場所が判明するきっかけが、基本病院沙汰
この辺りが特に「さすがに自分の子どもでもちょっと許せないかも」と感じてしまいました。
↑上の2番目に書いた「金を貸してくれ」のくだりでは、ニックとデヴィッドは言い合いになり、
今のお前は一体誰なんだ?(Who are you, Nick?)
とデヴィッドが言うんですが…この言葉はすごく重いなと感じました。
まず、自分の子どもにこんな質問をしなければならない状況がものすごくキツいし、
言葉の意味としても「あなたは誰?ニック」ってことなので、
ニックと分かっているのに誰?と言う=自分の知っているニックではないというのが
この言葉の中に詰まっているような気がしました。
「救えない」
485日間シラフだったが…
何度か病院沙汰になったニックは、実母ヴィッキーが住んでいるLAの施設に入ります。
同じ薬物依存の人と対話したり、社会復帰の活動に参加したりなど、改善の兆しを見せていました。
そして久々に父デヴィッドが住むサンフランシスコの実家に帰省。
デヴィッドの再婚した妻(継母)カレンやその子どもたち(義理の兄弟)と楽しく過ごします。
しかし…485日間もの間シラフの状態でいられたニックからは、実家からLAに帰る頃に少し不安定な様子が。
デヴィッドはそれを察知してニックの携帯に留守電を入れつづけますが…
その頃ニックは再び薬物に手を出してしまっていました。
(夜の街でぶらぶらしていた時に偶然元カノと会って、高揚感もあって勢いで…という感じ)
実家に「不法侵入」
この時に、金目の物を取りに来たのか薬物接種に必要な物を取りに来たか分からないんですが、
ニックは実家のドアを蹴破って侵入しているんです。
これわたし的には大アウトでして😨💦 見ていてまぁまぁキレそうになりました笑。
そして、デイヴィット達が帰宅し慌てて車で逃げていくニックを追いかけたのが、継母であるカレンでした。
「もーうキレたよ私は!!」という感じの表情で車に乗り込んだカレンの様子を見た時には、
「そりゃそうなるよ!!」と共感しかなかったです。
そして泣きながらニックを追いかけるカレンを見ていたら、
「再婚した人の子どもにここまで親身になってくれるなんて…本当の家族だよ…大切にしないとだよニック…」と切なくなりました。
ついに自分以外の人も巻き込んでしまう
久々に元カノに会った高揚感もあってか、一緒に薬物を接種したニック。
そして一緒に実家に不法侵入までして、カレンの追っ手を振り切った後に
過剰摂取により元カノが意識を失ってしまいます。
そして、救急車で運ばれる元カノを見送った後、ニックはデイヴィットに電話し、
泣いて「助けてくれ」と懇願しますが…デイヴィットの答えはNO。
うーん…これはもう「そうなるよね」としか思えませんでした。
最初はデイヴィットもまだニックを探しに行こうとしてはいたんですが、
カレンが「救えないのよ!」と引き止めたんです。
悲しいですが…これが薬物依存症の真理なんだろうなと感じました。
絶対に、手を出してはいけない。そこに戻るんだと思います。
でも「家」は必要
自暴自棄になったニックは再び薬物を過剰摂取して倒れますが、奇跡的に命を取り留めます。
病院を訪れたデヴィッドは、歩くのもままならないほど衰弱したニックを介助して、病院の庭へ。
無言で椅子に座る2人。気持ちが込み上げてきて涙を流すニック。
しかしこの時デヴィッドは自分からすぐに抱きしめにはいかず、
泣き崩れるニックの背中を撫でた後に、座ったまま無言で両手でニックを包んであげていました。
「世界中の言葉を全て集めてもこの愛を伝えきれない。お前を想う気持ちこそすべて。すべてをこえて愛してる」
映画中盤で明かされる、父デヴィッドから息子ニックへの思いをこめた「すべて(everything)」という言葉の意味。
映画冒頭から聞いていた「すべて」の意味が分かったシーンでは、もう涙腺が崩壊しましたよ…。
こんな大切な言葉を、会う時にはお互いに言ってスッと抱き合っていたのに、
無言のまますぐに抱きしめにいかずに…というところが、
この家族が今まで苦しんできたことが、そのまま表れているような気がしました。
こうして家族の関係性は少しずつ変わってしまいましたが、
●この時のデヴィッドのような背中を撫でてくれる存在
●ダメなところはちゃんとNOと言ってくれる存在
●全てを救うことはもう出来ないがそこに居てくれる存在
こういう意味の「家」は必要だなと感じました。
まとめ
薬物依存は脳の神経までダメージを負ってしまうので、
本人に相当な強い意志がないと、なかなか改善するのは難しそうだなと感じました。
また、周りにどれだけ「救いたい」という意志があっても、
この映画のケースの様に何度も裏切られてしまって…まで行ってしまうと、状況はかなり厳しいと思います。
(劇中にて医師が「治療が成功する確率は1%」と言い切るシーンがあります)
ただニックの様に、ほんの少しでも「このままではいけない」という意志がある人のための場所は大事だなと感じました。
…とは思うんですけどね…🤔🤔🤔
デヴィッドやカレン、ヴィッキーたちが経験してきたことを同じ親の目線で見ると、
とてもじゃないけど再び息子を信頼するのは難しいと思ったし、許せないところもあるので、
「ダメ、ゼッタイ!」
そもそものこれがやはり一番大切だと改めて痛感しました。
お話の内容とは対象的に、描写や景色・音楽がとても美しい作品だったなぁ。
なので余計に切なくなってしまったり…😭
ティモシー・シャラメさんの美しくも恐ろしい演技が印象に残ります。おすすめ。
作品詳細
原題『Beautiful Boy』
2019年の映画
監督…フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン
脚本…ルーク・デイビス、フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン
●デヴィッド・シェフ(フリーランスの著述家)…スティーヴ・カレル
●ニック・シェフ(デヴィッドの息子)…ティモシー・シャラメ
●カレン・バーバー(デヴィッドの現在のの妻)…モーラ・ティアニー
●ヴィッキー・シェフ(デヴィッドの元妻、ニックの実母)…エイミー・ライアン
…他。
(参考:映画.com )
予告編
映画『ビューティフル・ボーイ』海外版ロング予告編 (シネマトゥデイ公式You Tubeチャンネル より)
読んでいただきありがとうございました🎥