映画『断崖』サスペンスというよりも、一人の一途な女性の話。

●洋画(主にアメリカ),断崖(1941)

ヒッチコック監督 映画 断崖 レビュー

こんにちは!lenoreです。

今回は、ヒッチコック監督の映画『断崖』について書こうと思います。

 

原題は『Suspicion(疑惑・疑念)』!  しかも男女の話!

これはサスペンスサスペンスしてそうだなー🤔と思って観てみたら、

どちらかというとサスペンスをベースにして、一人の女性の一途な感情を描いた映画という感じでした。

 

同じ様に男女が登場するヒッチコック監督の他のサスペンス作品とは、また少し違うかなという気がします。



初対面からベタ惚れ

1等車での偶然の?出会い

リナ・マクレイドローは、列車の1等車の席に座って本を読んでいました。

●英国紳士が被るようなハット

●肩パッドがしっかり入ったストライプのスーツ

●メガネをかけ手には『CHILD PSYCHOLOGY(児童心理学)』と書かれた本…

リナの雰囲気は、かなりカッチリとした印象を受けるものでした

 

そんな彼女のもとへ急にやってきたのが、

「隣の男のタバコの煙から逃げてきたんですよ。昨日から悩まされ続けていてね。ここは空室かなと思ったんですが、トンネルで暗くて見えなくて…足に当たってしまいましたが、お怪我はないですか?」

…と、入ってくるなり矢継ぎ早に話すイケメン男性、ジョニー・エイスガース

 

車掌さんがチケット確認のために入ってきて初めて、

ジョニーが持っていたのは3等車のチケットだと分かるんですが…

私:隣の部屋でもないし、そもそも1等車でもないし、この数分間話したことのほとんどが嘘かい😂!

となったほど「超絶イケメンだけど、いい加減そうな人だな」という印象をもちました

(しかもチケットの差額分をうまいことリナに払わせるというダメダメぶりをこの時点から発揮笑!)

猛アタックするジョニー

その後、乗馬の会の集まりがあった時に偶然同じ場所に居合わせ、

列車の時のカッチリとした印象とは全く違う柔和な表情のリナに更に惹かれたジョニーは、早速アタック!

知り合いを頼ってリナの家を訪問し、みんなで教会に出かけようと誘います。

 

準備するリナを待つ間、リナが先ほどまで見ていたであろう本を開くと、

そこに挟まっていたのは新聞に載ったジョニーの写真

ジョニーは「(彼女も俺のこと気にしてくれてるのかも…!)」とウキウキした表情を浮かべます。

この時のジョニーを演じているケーリー・グラントの顔がめちゃくちゃ可愛かったな笑。

 

(列車で相席になった時にリナが読んでいた新聞にジョニーの写真があり、リナが「あれ…この人だ!!」と少し驚くような描写が。名前も一緒に載っていたので、おそらく覚えておこうと持っていた?=初対面からリサも惹かれていたのではないかと思われます)

今度はリナがジョニーを追うように

しかし、こんな風にトントン拍子に恋愛が進んではいけないと思ったのか、

リナもジョニーのことが好きそうなのに、簡単には猛アタックに応えようとしません。

 

そんな中、リナがたまたま耳にしたのが、リナの結婚について気にしていた両親の会話

もう両親を心配させまいと思ったのか、「"婚期を逃した"?そんなことないよ私!」と思ったのか、

これをきっかけにリナは「ジョニーしか見えない🥰!」という方向へ完全に舵をきり、

今度はリナがジョニーを追いかけるように

 

そして一気に結婚まで駆け抜けます。



序盤の流れが早すぎる感はあるが…【この段落以後、内容について言及があります】

冒頭からハネムーンでも面白いかも?

この出会い~結婚までの流れが、序盤の約20分で一気に進んでいくので、

最初っからジョニーのダメ男っぷりが発揮されているのに、リナはどうしてこんなにのめり込んじゃうのかな🤔?

と、ちょっと納得いかない感じは否めません

 

好き!だけど怖い!

愛してる!だけど信じられない!

やっぱり好き!だけど私を殺す気なのでは?!

うーん…ジョニーもジョニーだけどリナの情緒も心配になってしまうような感じ…🤔

 

いろんなパターンを妄想してみたんですが、

映画冒頭はもう既にラブラブで豪華なハネムーンから始まって、

その旅行先で「そう言えば私たちって…」と馴れ初めについて話す2人の会話=過去の回想によって、

惹かれ合った経緯や駆け引きが明らかになるという流れでも良かったんじゃないかなと思いました。

 

映画を観ている私たちからは「え?もうハネムーン来てるけど…彼ダメ過ぎない?大丈夫?」と

徐々に心配に=疑念を抱かせるような感じになるかも?と思いました。

ラストまで観ると…

こうは書いたんですが、映画のラストまで観ると、

「序盤からの一見早すぎる流れも良いかも」という気持ちにもなりました。

というのも、ラストで明らかになるジョニーの真意がわたし的には結構意外だったんですよね。

 

●倒れたリナのために牛乳を持ってくる献身的なジョニー。しかしその姿は暗闇で影と同一化したように暗く、牛乳だけが怪しい明るさを放っている。

●いつも陽気なジョニーがところどころ真顔になる(親友のビーキーが呼吸するのがかなり苦しそうになっているのに何の介抱もしないシーンなど)

こういう細かい描写から、ジョニーのことを陽気さと同時に冷徹さも持っている実はかなり怖い人?とまで思っていたので、

まさかまさか「会社のお金を横領したがもうどうにも出来ない。誰にも迷惑をかけない状態で自殺するしかない」自責の念を感じての行動だったとは💦となったんです。

 

このジョニーの真意を聞いたリナは「あなたのことを誤解していた」と謝罪。

2人を乗せた車は一度はリナの実家の方向へむかおうとしたもののすぐ引き返し、

自分たちの家の方向へと走っていって、映画は終わります。

 

うーん…これで元の鞘に収まるのか…🤔と感じつつも、

●ジョニーはずっとプレイボーイで名を馳せてきたが、やっと本気になれる人(リナ)に出会った。だけど本当に愛している人への誠意ある接し方が分からない。だからおかしな方法ばかり取ってしまったということなのかもしれない。

●リナは、実の両親から「婚期を逃したが、娘は賢い、結婚しなくてもいい」と言われるほど、今まで男性に縁があまりなかったと思われる。ジョニーと結婚後も両親にとても感謝している様子だったし、心優しい人だというのが伝わってくる。初めて出会うタイプの男性(ジョニー)に急速に惹かれたが、ラストで「自殺を考えていた」と言うジョニーに対し「誤解していたわ」とすぐに謝罪したところが、彼女の人の良さ・純粋さを象徴している気がする。

 

こう感じて、なんだかんだありつつも、お似合いの二人なのかもと🤔✨

序盤に急速に惹かれ合ったのも、

どれだけ困難があっても一緒にやっていけるほどピッタリだったということなのかもと🤔✨

 

なんというか「相手を受け入れる状態が完璧になってからの結婚」じゃなくて、

「結婚してから足りないところを補い合って一緒に頑張っていこうよタイプの結婚」といえばいいのかな?

なにより2人ともお互いにすごく愛し合ってますしね。

 

てか結婚って結婚した時点が終点じゃなくて、結婚後2人でどう生活していくかが大事なので、

会社のお金を横領とかは論外ですが、ある意味この2人の結婚も大きい括りで言えば、

一緒に頑張っていくタイプの結婚として、そんなに珍しくはないのかなと感じました。



いやでもよく考えたらこれ「ヒッチコック監督」の作品だよな…

ラストシーンでは車をUターンさせ、家の方向へ帰っていく2人。

なんだかんだ平和に終わったのかな…?と思いましたが…

…よく考えたらこの映画…「ヒッチコック監督」の作品なんですよね😮

 

こんなにまるくおさまるはずがないと考えた場合、

●ビーキーが"英国人"と会った後に亡くなったとされるフランスには行っていない。本当?

●フランスではなく、リサの保険を担保にお金を借りられないか聞きにリバプールに行っていた。本当?

本当に自責の念を感じて自殺しようとしていたとしても、

ビーキーが亡くなった経緯やリサの保険に手を出そうとしていた経緯についての証拠がないんですよね🤔

 

車でUターンした時に2人の間でどんな話があったのかは分かりませんが、

リサの疑念が合っていたパターンも全然あり得るんじゃないかなという気がします。

ここまで勘ぐらせるヒッチコック監督、恐ろしい😱!!

まとめ

鑑賞直後は「うーん、なんかサスペンスサスペンスを想像してた感じとは少し違ったな」と思ったんですが、

序盤からラストまで、思い返したり改めて考えたりすればするほど、

私の中にどんどん"疑念"が溜まっていくという…。

 

すごい映画だなと感じました。いわゆるスルメ映画なのかもしれません。

 

私としては、お互い"半人前"だけど、協力し合って生きていく道をいってほしい。

だけど、ジョニー!お前やっぱり!!パターンもありそう。

不思議な気分になる面白い映画でした!

作品詳細

1941年の作品

原題:『Suspicion』

原作…フランシス・アイリスの小説『犯行以前』

監督…アルフレッド・ヒッチコック
脚本…サムソン・ラファエルソン、アルマ・レヴィル、ジョーン・ハリソン

●ジョニー・エイスガース(ケーリー・グラント)…無一文のプレイボーイ
●リナ・マクレイドロー(ジョーン・フォンテイン)…マクレイドロー将軍の娘
●ビーキー・スウェイト(ナイジェル・ブルース)…ジョニーの親友・悪友
…他。

(参考:U-NEXT作品ページ, 映画.com

 

 

読んでいただきありがとうございました🎥